2016年05月07日

これは未完成。

シャキ。シャキ。
紙を切る音が聞こえる。

春。
アパートの二階、角部屋。
窓からは春のあたたかく柔らかい陽が射し込んでいる。
外には桜の木。
優しく風が吹き、
開いている窓から部屋へ桜の花びらが入ってくる。

女がひとり。
花紙を切っている。
鼻歌が
か細く、途切れ途切れに聞こえる。

しばらくして、

女「春
【春はあけぼの。やうやうしろく】…
【春眠暁を】…
【春のうららの】…
続きを思い出そうとすると頭の奥の方、
目の奥の方…奥だなぁと思う奥の方がぼーっとする。」

女、切った花紙を集めて部屋に撒き散らす。

男「ただいまぁ」

男が部屋に入ってくる。
手には花紙が入った買い物袋。

女「春の匂いがする。」

男「はるのにおい?」

女「わかる?」

男「花の匂いじゃなくて?」

女「春の匂い」

男「春のねぇ…」

男、女に手に持っていた物を渡す。
女、また花紙を切り始める。
男、その姿を見たり
部屋に散らかってる花紙を集めて散らして見せたり
コーヒーを飲んだり。

しばらくして

女「…昔ね」

男「ん?」

女「昔、好きだった人がね、【春の匂いがする】って(言ってね)」

男、女